物価高と戦う個人店のいま
この記事でわかること: 飲食店の原価率は「30%が目安」とよく言われます。でも物価高が続く今、その常識が通用しなくなっています。現役の個人飲食店オーナーとして、今まさに格闘している原価率のリアルをお伝えします。
今、原価率が49%ある
正直に話します。
うちの店の原価率は、食材全体で見ると約49%あります。一般的に「飲食店の原価率は30%が目安」と言われますが、うちはその数字とはかけ離れています。
原因はいくつかあります。まず物価高。魚が上がった。肉が上がった。野菜が上がった。米が倍になった。今まで利益を取れていた安い食材が、ここ数年で軒並み値上がりしました。
ただ、なぜそれでも成り立っているのか。それはうちの店の構造にあります。家族で営業しているため人件費を抑えられています。店の規模も小さいため、家賃も低く抑えられています。その分、食材にコストをかけられる——これがうちのモデルです。
自分の店の固定費構造によって、適正な原価率は変わります。人件費が高い店、家賃が高い店では、同じ原価率では利益が出ません。「30%が目安」はあくまで目安であって、自分の店のコスト構造を把握した上で判断することが大切です。
ドリンクの原価率を意図的に高く設定していた
もう一つ正直に話すと、うちはドリンクの原価率を意図的に50%近く設定していました。
「儲けを出すより、お客さんにいいお酒をリーズナブルに楽しんでほしい」という気持ちからです。飲食店では一般的にドリンクで利益を出すと言われますが、うちはあえてそこを薄くしていました。
ただ、物価高が続く中でそれも限界になってきました。仕入れ値が上がっても、価格を据え置いていると原価率はさらに上がっていく。まずドリンクの価格を少し上げることにしました。
お客さんに伝えると、「そうだよね」と納得してくれました。
値上げは勇気がいります。でも、丁寧に理由を伝えれば、長く通ってくれているお客さんは理解してくれる。この経験から、そう感じています。
質を落とさずに原価率を改善する方法
「原価率を下げる=質を落とす」と思っている人がいますが、それは違います。
工夫次第で、質を維持しながら原価率を改善できます。
私が今取り組んでいることの一つが、野菜を上手く使うことです。
魚や肉の価格が上がった分、野菜を効果的に組み合わせることでコストを調整する。野菜自体の価格も上がっていますが、それでも魚や肉より原価を抑えやすい。見た目や満足感を損なわずに、上手くかさ増しする工夫です。
「かさ増し」というと聞こえが悪いかもしれませんが、料理のバランスを考えた上での話です。野菜をきちんと使うことで、栄養のバランスも良くなるし、料理としての完成度も上がる。コスト管理と料理の質を両立させるための工夫です。
「自分が美味しいと思わないものは出さない」
原価の話をしていると、「どこまでコストを下げられるか」という議論になりがちです。でも、私には一つ譲れないことがあります。
自分が美味しいと思わないものは出さない。
お客さんに「これ美味しいですよ」と勧めるためには、自分が本当にそう思っていないといけない。信じていないものは勧められない。これは経営の話ではなく、人としての話です。
物価が上がって仕入れが苦しくなっても、この一点は変えるつもりはありません。質を落として原価率を改善するくらいなら、出す品数を減らすか、価格を上げる方を選びます。
うちの店が原価率を高く保てる理由
ここで一つ、うちの店の事情をお伝えします。
うちは家族で営業しているため、人件費を抑えられています。また、店の規模も小さいため、家賃も一般的な飲食店より低く抑えられています。
その分、食材にコストをかけられる構造になっています。原価率が高くても、固定費が低い分でカバーできる——これがうちのモデルです。
ただ、これはうちの特殊な状況です。スタッフを雇っている店や、家賃が高いテナントを借りている店では、同じ原価率では利益が出ません。自分の店の固定費構造を把握した上で、適正な原価率を設定することが大切です。
物価高時代の原価率の考え方
最後に、今の時代の原価率についての考え方をまとめます。
① 「30%が目安」はあくまで目安
業態・規模・固定費の構造によって、適正な原価率は変わります。うちのように約50%あっても成り立つ構造の店もあれば、30%を超えると厳しい店もある。自分の店のコスト構造を把握した上で判断することが大切です。
② 値上げは必要なこと
物価が上がっているのに価格を据え置けば、原価率は上がり続けます。適正な利益を確保するための値上げは、店を続けるために必要な判断です。
③ 質を落とさない工夫が先
まず取り組むべきは「質を下げる」ではなく「工夫する」こと。食材の組み合わせ、仕入れ先の見直し、メニュー構成の変更——質を維持しながらコストを改善できる余地を探すことが先です。
④ 自分を安売りしない
最後に、一番大切なことを言わせてください。
うちも49%は高すぎると感じています。お酒の価格を上げ、少しずつ全体の価格も改善していくつもりです。
ただ、その理由は「利益を最大化したいから」ではありません。自分を安売りしないためです。
安くすれば客は来るかもしれない。でも、適正な価格をいただいてこそ、いい食材を使い続けられる。丁寧な仕事ができる。長く続けられる。
値段を下げることは簡単です。でも一度下げた価格を上げることは難しい。最初から適正な価格で、自分が誇れるものを出す——これが個人飲食店が長く続くための、一番の近道だと思っています。
👉 次の記事:飲食店の値上げ、どう伝えるか
「小さな店の経営帳」では、個人飲食店オーナーのリアルな経営ノウハウを発信しています。税務、価格設定、仕入れ、集客——現場の実体験から、教科書には載っていない知恵をお届けします。
筆者プロフィール
ある地方都市で小さな個人飲食店を営む店主。開業から10年以上、家族経営のスタイルで営業を続けています。
数字が得意なわけでも、敏腕経営者でもない。運とある程度の経験で、なんとかここまでやってきた感じです。
このブログでは、そんな私が独断と偏見で、飾らずに正直に話します。成功法則より、現場のリアルを。
【原価率、把握できてる?という話】
原価率って「意識する」だけじゃ意味なくて、ちゃんと記録して初めて武器になります。
でもこれが面倒なんですよね。もし今から始めるとしたら、クラウド会計ソフトを使うと思います。売上も仕入れも自動で集まってくるので、数字を「見える化」する仕組みが自然とできあがります。物価高で原価がじわじわ上がってる今、これは結構大事なことだと感じています。

コメント