飲食店の原価率、リアルな話

経営・お金

※本記事はプロモーション(広告)を含みます。

先に、正直に言います。

うちの店の原価率は、食材全体で見ると約49%あります。

「飲食店の原価率は30%が目安」とよく言われますよね。その数字からすると、うちは完全に「アウト」です。でも、開業から10年以上、なんとか潰れずに続いています。

この記事では、原価率の計算式や業態別の目安といった基礎をきちんと押さえつつ、「なぜ原価率49%でも店が成り立つのか」を、現役の個人飲食店オーナーとして自店の数字で正直にお話しします。教科書的な一般論では出てこない、現場のリアルです。

一般的な目安30%に対し、うちの店の原価率は49%あることを示す対比図

そもそも原価率とは?計算式を「うちの数字」で説明します

まず基礎から。原価率の計算式はこれだけです。

原価率(%)= 食材原価 ÷ 売上 × 100

たとえば、売上1,000円の料理に食材費が300円かかっていれば、原価率は30%です。

これをうちの店に当てはめると——売上に対して食材費が約49%かかっている、ということ。1,000円いただいて、そのうち約490円が食材に消えている計算です。残りで家賃・光熱費・諸経費をまかなって、ようやく手元に残る。数字だけ見ると「よく回ってるな」と自分でも思います。

原因はシンプルで、物価高です。魚が上がった。肉が上がった。野菜が上がった。米にいたっては倍近い。今まで利益を取れていた安い食材が、ここ数年で軒並み値上がりしました。実際、2025〜2026年は9割以上の飲食店が仕入れ価格の上昇に直面しているという調査もあります(諸調査より)。

業態別の原価率の目安一覧(うちはどこに当てはまる?)

「30%が目安」とよく言いますが、実は業態によって適正な原価率はぜんぜん違います。一般に言われている目安をまとめると、だいたいこんな感じです(メディアによって幅があるので、レンジで示します)。

業態原価率の目安
バー18〜30%
カフェ・喫茶店23〜35%
居酒屋・大衆酒場28〜38%
ラーメン・そば・うどん30〜42%
一般的なレストラン・和食・洋食30〜40%
焼肉38〜50%
寿司・高級日本料理40〜55%

※あくまで一般に言われる目安です。同じ業態でも店によって変わります。

こうして見ると、うちの49%は、ほとんどの業態の目安より高いことが分かります。それでも成り立っているのには、理由があります。次の章が、この記事で一番伝えたいところです。

でも、原価率だけ見てはいけない|「FL比率」という考え方

ここが本題です。

実は、原価率だけを見て「高い・低い」を判断するのは危険です。プロが見ているのは「FL比率」という数字です。

  • Food(食材費)+ Labor(人件費)= FL比率
  • 目安は売上の50〜60%以内が理想。60%を超えると利益が出にくいと言われます。
  • さらに家賃(Rent)を足したFLR比率は、70%以内が目安とされます。

つまり、原価率(F)が高くても、人件費(L)や家賃(R)が低ければ、トータルでは健全ということ。逆に、原価率が30%でも人件費と家賃が重ければ、利益は残りません。

なぜうちは原価率49%でも回るのか

ここでうちの店の事情です。

うちは家族で営業しているため、人件費(L)がほとんどかかっていません。店の規模も小さいので、家賃(R)も一般的な飲食店よりずっと低い

だから、原価率(F)が49%と高くても、FL比率・FLR比率で見れば、なんとか健全な範囲に収まっている。「固定費が低い分を、食材にかけている」——これがうちのモデルなんです。

逆に言えば、スタッフを何人も雇っている店や、駅前の高い家賃を払っている店が、うちと同じ49%をやったら一発で潰れます。「30%が目安」を鵜呑みにするのではなく、自分の店のFL・FLR比率で考える。これが、数字に振り回されないための一番大事な視点です。

FLR比率の内訳。固定費の低い店は原価率が高くても成立することを示す対比図

ドリンクの原価率を「わざと」50%近くにしていた話

もう一つ、正直に話します。一般的なセオリーと真逆のことをやっていました。

飲食店では普通、ドリンクは原価率を低く(20〜25%程度に)抑えて、そこで利益を出すと言われます。でも、うちはドリンクの原価率を意図的に50%近くに設定していました。

理由は「儲けを出すより、お客さんにいいお酒をリーズナブルに楽しんでほしい」という気持ちから。利益の柱であるはずのドリンクを、あえて薄くしていたんです。

正直、商売としては「間違い」かもしれません。でも、それがうちの店の色でした。

ただ——物価高が続く中で、それも限界になってきました。仕入れ値が上がっても価格を据え置けば、原価率はさらに上がっていく。まずドリンクの価格を少し上げることにしました。

値上げは、本当に勇気がいりました。常連さんに申し訳ない気持ちもありました。でも、思い切って理由を伝えると、「そうだよね」と納得してくれた。丁寧に理由を伝えれば、長く通ってくれているお客さんは理解してくれる。この経験で、そう確信しました。

👉 値上げの伝え方は別記事で詳しく書いています →飲食店の値上げ、どう伝えるか

原価の管理がしんどいなら、税理士に任せる手も。私はそれで本業に集中できました。

👉 個人飲食店の税理士費用

質を落とさず原価率を改善する具体的な方法

「原価率を下げる=質を落とす」と思っている人がいますが、それは違います。工夫次第で、質を守りながら改善できます。プロが使う定番の方法と、私が実際にやっていることを合わせて紹介します。

① 歩留まりを意識する
たとえば1kgの魚を仕入れても、使える部分(可食部)が700gなら、実質の原価は「仕入れ値 ÷ 0.7」。捨てる部分が多いほど、実は原価率は上がっています。アラまで使い切る、野菜の皮や芯も別の一品に回す——これだけで数字は変わります。

② フードロスを減らす
廃棄は、売上の数%を静かに食いつぶします。仕込みすぎない、先入れ先出しを徹底する。地味ですが効きます。

③ 提供量をそろえる(ポーションコントロール)
「今日は多め、明日は少なめ」だと原価が読めません。盛り付けの基準を決めるだけで、ブレが減ります。

④ 私の場合は「野菜を上手く使う」
魚や肉が上がった分、野菜を効果的に組み合わせてコストを調整しています。野菜も値上がりしていますが、それでも魚や肉よりは抑えやすい。「かさ増し」と言うと聞こえが悪いですが、料理のバランスを考えた上でなら、栄養も満足感も上がる。質とコストを両立させる工夫です。

ポイントは、値上げの前に、まずこうした工夫を尽くすこと。それでも厳しいときに、初めて価格に手をつけます。

「自分が美味しいと思わないものは出さない」

原価の話をしていると、「どこまでコストを下げられるか」という議論になりがちです。でも、私には一つだけ譲れないことがあります。

自分が美味しいと思わないものは出さない。

お客さんに「これ美味しいですよ」と勧めるには、自分が本当にそう思っていないといけない。信じていないものは勧められない。これは経営の話ではなく、人としての話です。

物価が上がって仕入れが苦しくなっても、ここは変えません。質を落として原価率を改善するくらいなら、出す品数を減らすか、価格を上げる方を選びます。

物価高時代の原価率の考え方|10年やってきた私の4箇条

最後に、教科書ではなく、現場で10年やってきた私なりの結論を4つにまとめます。

① 「30%が目安」はあくまで目安
業態・規模・固定費の構造で、適正な原価率は変わります。うちのように約50%でも成り立つ店もあれば、30%でも厳しい店もある。自分の店のFL・FLR比率で判断するのが正解です。

② 値上げは「必要なこと」
物価が上がっているのに価格を据え置けば、原価率は上がり続けます。適正な利益を確保するための値上げは、店を続けるために必要な判断です。罪悪感を持つ必要はありません。

③ 質を落とさない工夫が先
まず取り組むべきは「質を下げる」ではなく「工夫する」こと。歩留まり、ロス削減、食材の組み合わせ、仕入れ先の見直し——質を守ったまま改善できる余地を、先に探し尽くす。

④ 自分を安売りしない
うちも49%は高すぎると感じていて、少しずつ価格を改善していくつもりです。でもその理由は「利益の最大化」ではなく、自分を安売りしないため。安くすれば客は来るかもしれない。でも、適正な価格をいただいてこそ、いい食材を使い続けられる。丁寧な仕事ができる。長く続けられる。値段を下げるのは簡単でも、一度下げた価格を上げるのは難しい。最初から適正な価格で、自分が誇れるものを出す——これが、個人飲食店が長く続くための一番の近道だと思っています。


原価率は「記録」して初めて武器になる

ここまで原価率の話をしてきましたが、最後に大事なことを。

原価率は「意識する」だけでは意味がなくて、ちゃんと記録して初めて武器になります。どの食材がどれだけ上がったか、利益はどう変わったか——数字で見えていないと、値上げの判断もメニューの見直しもできません。

でも、この「数字の管理」が個人店には一番しんどい。仕込みと営業で手一杯なのに、帳簿まで——。

私の場合は、この数字の管理を全部、税理士さんに任せています。原価や利益の相談もできるし、確定申告も任せられる。「数字が苦手だから本業に集中したい」という人には、税理士に任せるのが一番ラクだと感じています。私自身は知人の紹介で出会えましたが、ツテがない方は、無料で複数の事務所を比較できる税理士紹介サービスで探すのが近道です。

※私自身はこの紹介サービスで契約したわけではなく、知人紹介での体験です。ツテがない方の探し方の一つとしての紹介です。税理士費用のリアルな相場は別記事で公開しています →個人飲食店の税理士費用

自分で数字を見える化したい人は

「税理士に頼むほどの規模じゃない」「まずは自分で記録したい」という方は、クラウド会計ソフトを使うと、売上も仕入れも自動で集まって数字が見える化できます。物価高で原価がじわじわ上がっている今、これは結構大事です。


筆者プロフィール

ある地方都市で小さな個人飲食店を営む店主。開業から10年以上、家族経営のスタイルで営業を続けています。

数字が得意なわけでも、敏腕経営者でもない。運とある程度の経験で、なんとかここまでやってきた感じです。このブログでは、そんな私が独断と偏見で、飾らずに正直に話します。成功法則より、現場のリアルを。

📌 関連記事(新着):FL比率とは個人飲食店は儲かるのか

……と、偉そうに書いてしまいましたが、私自身もこうして記事を書きながら、あらためて勉強している身です。一緒に学んでいけたら嬉しいです。

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