私が絶対に借りない飲食店の物件3選|10年続けた店主の本音

開業・独立

「いい物件、なかなか見つからないなあ……」開業の準備で、一番時間がかかるのが物件探しかもしれません。

物件選びって、つい「どんな物件がいいか」を探しがちですよね。でも私は、地方で10年以上小さな店をやってきて、大事なのは”どんな物件を選ぶか”より、”どんな物件を避けるか”だと思っています。失敗する物件にはパターンがあって、それさえ避ければ、開業の大きな失敗はかなり減らせるからです。

今回は、私だったら絶対に借りない物件を3つ、実体験をまじえて正直にお話しします。あくまで「うちのような小さな店の場合」ですが、同じ立場の方の参考になれば嬉しいです。

空き店舗の前で物件を見定める店主のイラスト

絶対に借りない物件①:駐車場に入りにくい物件

地方・郊外で店をやるなら、駐車場は本当に大事です。そもそも駐車場がない物件は、車社会の地方ではかなり厳しい。でも、私がそれ以上に警戒するのが、「駐車場はあるけど、入りにくい作りの物件」です。

車通りの多い道沿いで、一見すると立地が良さそうに見える。でも、いざ入ろうとすると、後ろの車が気になって入りにくい。出るときも大変。こういう物件は、お客さんが無意識に「面倒だな」と感じて、だんだん足が遠のきます。

実際、私が以前見たそういう物件は、あとで聞いたらお店ができてはツブれ、を繰り返している場所でした。立地が良さそうなのに続かない店には、たいてい理由があるんです。

私のおすすめは、むしろ交通量の多い道から、一本入ったくらいの場所。そのほうがお客さんもゆっくり停められて、落ち着いて入ってこられます。「車通りが多い=いい立地」と単純に考えず、「お客さんがストレスなく停められるか」を必ず自分の車で試してみてください。

絶対に借りない物件②:インフラ(電気・ガス・水道)に不安がある物件

見落としやすいのが、電気・ガス・水道といったインフラの容量です。飲食店は家庭よりずっと多くの電気やガスを使います。容量が足りないと、あとから増設工事が必要になって、数十万円の追加費用がかかることもあります。内装より先に、ここを確認しておくべきです。

特に注意したいのが「プロパンガス」

これは声を大にして言いたいのですが、ガスがプロパンガス(LPガス)の物件は要注意です。都市ガスと違って、プロパンは料金が業者の言い値になりやすく、相場よりずっと高い”ぼったくり”のような業者も正直います。毎月のガス代は、営業を続けるかぎりずっとかかる固定費です。ここが高いと、地味に、でも確実に利益を削ります。

物件がプロパンの場合は、契約前に必ず複数のガス会社の料金を比較してください。大家さん指定の業者しか使えないこともあるので、その条件もあわせて確認を。「ガスなんてどこも同じだろう」と思っていると、あとで痛い目を見ます。

排水(グリストラップ)や換気も、あとから直すと大変なところです。このあたりは、内装をお願いする業者さんや大工さんに一緒に見てもらうと安心です。

絶対に借りない物件③:家賃が身の丈に合わない物件

そして一番大事なのが家賃です。物件選びで、私が何より重視するのはここです。

「いい立地だから」「広いから」と、つい背伸びして高い家賃の物件を選びたくなります。でも、家賃は毎月必ず出ていく固定費。売上が不安定な開業直後に、これが重いと一気に苦しくなります。だから大原則は、まず小さく始めること。背伸びした物件より、身の丈に合った小さな物件のほうが、ずっと長く続けられます。

「小さく始める」で私がよく思い出すのが、居酒屋チェーンのつぼ八です。実はあの店名、創業時の店がたった8坪だったことが由来なんだそうです(1973年、札幌から)。あれだけ全国に広がったお店も、最初は小さな一軒から始まった。最初から大きく構える必要はないんだ、と勇気をもらえる話です。まずは自分が無理なく回せる広さで始めて、手応えを感じてから次を考える。それで十分だと思います。

それと「身の丈」を考えるとき、毎月の家賃だけで判断しないこと。物件を借りるには、最初に保証金(事業用だと家賃の6〜10ヶ月分が相場)がまとまって必要ですし、お店を辞めるときには内装をすべて取り払って元に戻す「スケルトン返し(原状回復)」でまたお金がかかります。つまり、入るときも出るときもお金がかかる。「この家賃なら払えそう」だけでなく、入口と出口のコストまで含めて、本当に身の丈に合っているかを見てください。ここを見落とすと、いざ辞めたいときに「辞めるお金がない」という一番つらい状況になりかねません。

それと、これは物件そのものではないですが、大家さんと「合わなさそうだな」と感じたら、私は借りません。お店は何年も続けるもの。途中で雨漏りやトラブルがあったとき、相談しやすい大家さんかどうかは、思っている以上に大事です。後々もめるのが目に見えているなら、最初から避けたほうがいい。

近隣に同業が多い場合は、ケースバイケースです。そのエリアの同業店が全部にぎわっているなら、人が集まる場所という証拠なのでアリ。でも、どこも暇そうなら、その地域自体に元気がないのかもしれません。よく観察してから決めてください。

物件選びの全体像(立地・居抜き・契約)は、こちらの記事でもくわしく書いています。あわせてどうぞ。

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ちなみに「立地が全て」って、本当でしょうか

物件の話になると、必ず「飲食店は立地が9割」「立地が全て」と言われます。もちろん立地は大事です。でも正直に言うと、私は「立地が全て」とまでは思っていません

たしかに、立地がいいと最初の客入りは変わります。通りすがりの人がふらっと入ってくれる。でも、そのお客さんが二度三度と通ってくれるかどうかは、立地とは別の力です。味、接客、お店の雰囲気、店主の人柄——そういうものがないと、どんなにいい立地でも続きません。

逆に言えば、立地が完璧じゃなくても、中身がしっかりしていれば、お客さんはちゃんと見つけて、通ってくれます。とくに今は、SNSやGoogleマップで「いい店」が見つけてもらえる時代です。だから私は、立地で背伸びしてお金を使うより、自分が無理なく続けられる物件を選んで、中身で勝負するほうがいいと思っています。

もう少しだけ立地の話を続けると、立地には大きく二つのタイプがあると感じています。一つは、郊外の飲み屋街のように、もともと人の流れがある場所。ここは最初からお客さんが来やすく、比較的手堅いです。もう一つは、「えっ、こんなところに!?」と驚かれるような場所。最初は苦戦しますが、続けるうちにその意外性が話題になって、かえって強い店になることがあります。隠れ家的な人気店って、案外こういう場所から生まれます。

ただし、後者を選ぶなら運転資金を厚めに用意しておくこと。話題になって軌道に乗るまでには時間がかかるので、その間を耐えられるだけの資金がないと、せっかくの伸びしろを活かす前に力尽きてしまいます。「立地で攻める」なら「資金で守る」。このセットで考えるのが大事だと思います。

絶対に借りない物件3選の図解(駐車場・インフラ・家賃)

まとめ:「借りない物件」を決めれば、失敗の大半は防げる

物件選びは、「最高の物件を見つけるゲーム」ではなく、「ダメな物件を避けるゲーム」だと思います。今回の3つをもう一度まとめると——

  • ① 駐車場に入りにくい物件(できてはツブれを繰り返す)
  • ② インフラに不安がある物件(特にプロパンガスは料金を比較)
  • ③ 家賃が身の丈に合わない物件(まず小さく始める)

そして、大家さんと合わなさそうなら避ける。立地は大事だけど、それが全てではない。——これが、10年やってきた私なりの、物件選びの本音です。

……と、偉そうに書いてしまいましたが、私自身もこうして記事を書きながら、あらためて勉強している身です。一緒に学んでいけたら嬉しいです。

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筆者プロフィール

ある地方都市で小さな個人飲食店を営む店主。開業から10年以上、家族経営のスタイルで営業を続けています。このブログでは、教科書には載っていない現場のリアルを、飾らず正直に発信しています。

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